差別化が難しい時代の差別化。

マーケティング

人々の多様化は、市場を大企業が寡占化するメガ市場と細分化されたスモール市場に二極化しています。そして、情報や技術の環境が進化し、以前よりも事業を始めやすくなることにより、多様化細分化した市場には多くの企業が参入してきます。しかし、それだけに差別化が難しくなっています。

同じマーケットの企業は、ビジネスモデルが同じですから、商品やサービス、業態も似てきます。圧倒的な技術やアイデアが無い限り、商品で差別化を図るのが難しくなっています。商品特徴を謳ったところで、他社も同じような特徴の商品を売っています。こういった、商品が一般化同質化することをコモディティ化等と言われたりしますが、差別化が非常に難しいマーケット状況にあります。

ビジネスモデルも商品もほぼ同じ、しかし、当たり前ですが経営者は異なるのです。経営者は、会社や事業を立ち上げるとき、あるいは事業を軌道に乗せるとき、それぞれに苦労をしているはずです。そのとき、どうしてそこまで苦労してでもやるのかと言ったら、その背景に何らかの「想い」が有るからです。もちろん、「儲かりうそうだから」と新しい事業に乗り出す場合もあるでしょう。しかし、「儲かりそうだから」だけでうまくいくほど甘くないことは経営者が一番良くご存知のはずです。

その背景には何らかの「想い」があるはずです。お客さんには、こう喜んでほしいとか、その事業も含めての会社としての夢とか、そういった「想い」こそが差別化の原点になります。

「想い」の違いによって、商品やサービスの特徴に微妙な違いが出てくるはずです。そしてPR面でも「想い」を発信することにより、お客さんからは商品に込められた気持ちがわかります。それによって納得感や信頼感が生まれ、好感を持ってくれたりします。そうなると、もうすでに他社とは差別化できていることになります。好感をもって選んでいただけるということは、すでにブランディングできているということでもあります。

このように、商品レベルで差別化を考えるのではなく、いちど原点に立ち返って、「想い」から事業を点検してみてはどうでしょうか。改めて自社の「想い」を確認することで、商品における差別化ポイントも見えてくるかもしれません。

「想い」を点検して企業が変わった象徴的な例は、稲森さんによるJALの再生ではないでしょうか。巨額赤字や社内の組織の問題を多数抱えていたJALは、稲盛流の「フィロソフィー経営」によって、社内が結束し、組織体制や商品やサービスの点検修正を行い、短期間で黒字転換しました。稲森さんの言う「フィロソフィー」とはすなわち「想い」です。

また、アップルが劇的な復活を遂げた際にも、アップルが提供するものとは何かを問いただし、スティーブ・ジョブズが「Think Different」というコンセプトを打ち出し、商品構成やサービス体制などをすべて刷新しました。そして生まれたのが一斉を風靡したiMacでありiPodであり、そしてiPhoneです。ここでもアップルの「想い」とは何なのか、何を提供する会社なのかということを突き詰めた結果です。

ジョブズだけでなく、アップル社の社員全員が「Think Different」という想いを共有し、そこに根ざすことで、商品構成の見直しやサービス体制の変革、そして新しい革新的な商品などが、全社一丸となって生み出されています。

「Think Different」は、それまでライセンス化や販売チャネルの多様化によってウインドウズ陣営と同様のビジネスモデルになって巨額赤字に陥っていたアップルを、ウインドウズとは明確に違うコンピュータとして打ち出し、その上で革新的な商品を送り出していったのです。ここでは詳しく書きませんがiMacの特徴もまさに「Think Different」の言葉通り、いままでのコンピュータとは全く違う発想で作られていました。あれほどの大企業でも「想い」を点検することで変革できることが証明されました。それほど「想い」は企業にとって重要なものなのです。

これからの時代は、この想いや美意識など、マーケティングで科学しにくい面での差別化がポイントになってくるのではないでしょうか。

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