制作業務の上手な進め方

ムダやトラブルがなく合理的にスムーズに処理するために。

クライアントの担当者は、デザイナーやコピーライター、カメラマンと言った専門家とやり取りする場合が多いと思います。その際、少し知っておくだけでムダな時間と費用をかけずにスムーズに業務を進めることができます。
しばしば起こるのが、制作物の依頼やチェックの際に、コミュニケーションがうまく行かず、双方で思い違いをして、やり直しになるケースです。これは双方共に不満が生じます。制作者は専門家です。クライアント担当者の多くは制作の専門家ではありません。専門家が制作者に合わせるべきと思いがちですが、全体からすると、担当者が少し制作者寄りになる方が合理的です。

もちろん、制作者は、基本的に担当者に分かりやすいような進め方を心がけています。しかし、中身の専門的な作業との担当者の接点では分かりにくいこともでてきます。当然です。その場合に少し知っておくだけで、解決する問題は少なくありません。

以下に、そういう少し知っておく、意識しておくだけでスムーズに行くポイントをご紹介します。なお、方法については一例ですので、他にも良い方法があるかも知れませんし、その現場毎に良い方法が開発されるものでもあります。あくまで一般的な例としてご紹介します。

依頼時

与件・要件を整理しましょう。

意外と依頼時に情報が揃っていないことがあります。何を目的にするのか、予算は、納期は、誰が使うのかなどなど、何かを作るには、目的や予算、納期に応じて仕様や要件を決めなくてはなりません。あるいは必然的に決まってきます。

まだ決まっていない要素はいつ頃に決まるとか。あるいは、そもそもそのツールの役目(目的と同義ですが)が曖昧なことも多いです。WEBといっても今回の課題はどういうことかによって作り方やポイントも違ってきます。

要件が曖昧だと制作者は困ります。当然、提案も曖昧なものになります。提案を社内で検討する際も判断基準が曖昧なため、いろいろな意見が出てきてまとまりません。そのため検討にやたら時間がかかったり、挙げ句の果てに棚上げされてしまってという場合もあります。

要件を明確にして、提案されたモノが要件を満たしているかをチェックし、社内で検討する際も、社内の方に「こういう要件でつくっている」という判断基準を明確にしなければ、社内の判断も間違います。

予算の考え方

明確に決まっていなくても、およその目安は必要です。50万円でできることと100万円でできる事は違ってくるからです。そのくらいの差になると、スタート時点でのつくりかたや構成内容が違ってきます。100万円の目安で考えていた物を50万円にするのは、1から考え直しになる場合の方が多いです。ましてや制作が開始されてからでは、それまでの作業がすべてムダになってしまいます。建築物に例えると、4LDKの家と2LDKの家では、そもそも基礎が違ってきます。似たようなことがツール作りでも起こります。
目安が分からない場合は、仮におよその内容を設定し、制作者に目安としていくらくらいかかりそうかを大ざっぱに見積もってもらうのがよいと思います。制作者も経験値で大ざっぱに見積もるのはそんなに手間のかかる話ではありません。印刷物なら、サイズ、ページ数、撮影が必要なのかどうかやその規模(日数など)、イラストや図の数、部数などです。

WEBの場合は、目的、課題、必要なカテゴリー(大項目)、あとは撮影が必要なのかどうかやその規模(日数など)、イラストや図の数、部数などです。サーバーなどの環境を用意するかどうかも必要です。もちろん、その他にすでに決まっていることがあれば忘れずに伝えなければなりません。営業所への取材が必要だとか、動画が必要だとか、制作に関連する事です。それらでおよその目安をだして、それをガイドに進めると、制作しながらでも調整が可能になります。

提案の検討

提案をしてから返答までの期間は早いに越したことはありません。遅くてもできれば1週間を目安にして頂くのが良いです。一定の間隔でリズムよく進めていくのが一番良い結果を生みます。

制作という業務は、表現を伴うので主観や感情などが介在します。あまり時間が開くと制作の意欲が落ち着いてしまったり、当初の内容がぼやけてしまったりします。これは人間だから仕方ありません。例えプロでも人間なので、日々感情は変化します。平たく言えばノリが下がってしまうわけです。

企業によっては、制作途中のチェックで1ヶ月以上間が開く場合がありますが、それはクライアントにとっても大変損です。それだけ開くと、クライアントの担当者自身が「えーと、どうでしたっけ?」というような事にもなります。
どのような社内事情があるか分かりませんが、制作業務は、一定のリズムで一気に進める方が、双方とも楽で良い結果になります。関係するスタッフが多いと、当初の経緯や要件などを再度確認しながらの作業になります。非常に効率が悪いです。もちろん制作のプロなので、一定のクォリティは保証されますが、それ以上のものができる可能性は経験上下がるような気がします。あるいはクライアントご自身の熱が冷めていて、残務整理のように進められているような時さえあります。何のためにつくっているのか分からなくなります。

納期について

前項と関連しますが、納期に余裕がある場合も適正な納期を決めて、澱みなく進める方が良い結果になることが多いです。

クライアントの社内の納期から逆算して、制作者と相談して、いつ頃からスタートしてれば良いのかを適正に設定されるのがよいと思います。

チェックバックの仕方

基本的なチェック方法

一番確実なのは、WEBでも印刷物でもプリントアウトをして、そこに赤で修正指示を書いていただくことです。場合によっては別紙に書いていただき、本指示には「別紙参照」と書いていただければ良いです。WEBなどではそのままプリントできない場合がありますが、画面キャプチャーでプリントできます。また、プリントではなくPDFにしてそこに書き込んでいただくのでも良いです。長い文章などは、テキストデータもPDFからとれるので制作者も便利です。PDFでのやり取りがうまくできるのであれば、いちばん合理的です。ネット環境さえあればどこでも作業ができるからです。

指示の仕方

文章やレイアウトの指示は、基本的な校正記号で行っていただくことが確実です。文字で書くよりも分かりやすいです。

専門家としての校正者が使う記号は多岐にわたりますが、販促などの制作で通常よく使う校正記号はそう多くないので、覚えておくと指示を書く担当者も楽です。

改行、トル、行送り、追い込み、変更、訂正取り消し

必ず修正前後が分かる資料を。

修正箇所を含めた一体を「こうしてほしい」というできあがり見本を頂く場合がありますが、その場合も必ず修正前と比較できる朱原稿が必要です。「どこをどう修正するのか」が分からないからです。できあがり見本は、あくまで見本であり、どこをどう修正してそうなるかが大事です。場合によっては、「できあがり見本」が適切ではない場合もあります。

制作者は、その案件だけを待ち構えているわけではないので細部を忘れている場合があり、その指示に問題があることを見落としてしまう場合があるからです。

また、同様に修正部分をホワイトで塗りつぶして書いたり、紙を貼り付けて上から書くのもダメです。「どこをどう変えるか」が分からなくなるからです。

用語や表現の統一について

例えば「コンピューター」なのか「コンピュータ」なのか、「~ください。」なのか「~下さい。」なのか、意味的にはどちらでも通じますが、異なった表記が混在するのはスマートではありません。大手企業などでは、文章の表記方法について統一されたルールを決めて、ガイドブックをつくっている場合が多いです。言葉の表記だけで迷ったり修正を繰り返すのはムダな時間と手間とコストがかかるからです。

会社として、どのような表記に統一するかというものを決めてガイドブックにしておくと担当者が変わっても悩まなくて済みます。これは、ロゴマークなどの場合も同じです。

やり方が分からない場合

制作者にどのように指示を書けば良いのか分からない場合は、「どのように書けば良いですか?」と制作者に聞くのが一番です。制作者もそれがいちばんありがたいです。

デザインやレイアウトの吟味

デザインやレイアウトは、一番専門性が高いように感じる分野なので、少し思うことがあっても「こんなものなのかな」と思いがちですが、それは制作者に伝えるべきです。

また、基本的にそのデザインが要件を満たしているかは厳しくチェックするべきです。そのためには、依頼時に要件を明確に伝えなければなりません。要件を満たしていれば、その他のデザイン性や演出などは印象で判断しても良いと思います。また思いがあればそれも伝えるべきでしょう。

チェック体制について

あらかじめ誰が何をチェックするのかを決めておくことが大切です。チェックすべきものができてからチェックに携わる人が増えると船頭多くして船進まずになります。やたらと声をかけると事情を知らない方が違う意見を出して、それに振り回されることにもなりかねません。

撮影について

何を見せたいのか、何を撮らなければいけないのか、何カット必要なのかという情報が必要です。カット数は現場で動く場合がありますが、およその目安は必要です。それらによって段取りが大きく変わってくることがあるからです。

特に専門的な商品の場合など、制作者側はその商品について素人です。クライアントの具体的な指示や情報がなければ適切に撮ることができません。

意外と多いのは、撮るべきカットは分かっていてもそれで何を見せなければいけないのかが曖昧だったりすることです。

撮影した後で、営業部署から必要な場所が見えていないとか、ここも撮影して欲しいとかという修正や追加が返ってきて、再撮影になることがあります。こういったことは、事前に社内でよく検討(時にはカメラマンも一緒に)することが必要です。

作図、説明イラストなど

撮影と同じようなことですが、作図やイラストの指示も漠然とした内容であることがあります。「買い物をする主婦」とか「困っているビジネスマン」といったような要望があったりしますが、何をどう困っているのか、どこでの買い物なのかなど、要するにその絵で何を見せたいのかと言う情報が必要です。現場の制作者は具体的な情報がなければ絵にできません。
まずは、絵に盛り込むべき内容を明文化いただくのが一番良いと思います。明文化することで、明確になっていない情報が分かります。内容が明確になったところでその他の要素、左右の向きやムードなど演出要素も必要なことは伝えなければなりません。絵ができてから、もっとにぎやかなイメージなどと言った全体のムードの修正になると1から描き直しになることが多いものです。
説明図なども同様です。何を盛り込まなければいけないかを明文化し、下絵を描いていただくのが確実です。図というのは理屈の問題なので、下絵が描けないと言うことは、まだ内容が詰められていないということでもあります。

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