マインドが時代遅れの百貨店という業態。

かなり前から百貨店という業態自体が問われています。
年々少しずつ業績が落ちています。一時的にあがったとしても、長期的にはどうでしょうか。業態自体が時代に合っていないのではないでしょうか。今はまだ、百貨店を愛した高齢者層がいて、愛着やネットリテラシーやライフスタイルなどから、半ば慣習的に百貨店を使っていると思いますが、それより下の層には、百貨店を使うという必要がないと思います。

また、百貨店の重要なマーケットである贈答品、特に季節の贈答も同様に若い世代にはその習慣が薄れつつあります。また若い世代はより自分の欲求を満たしてくれる購買を探します。高齢者層は新たな購買先を探そうとする意欲が低いため、慣習的に百貨店を使っているのではないでしょうか。昔は、百貨店に行けば何でも揃う、そういう利便性がありました。ほかに選択肢がなかったからです。しかし、今はいろいろな業態のお店があり、利便性、価格性などで使い分けることができるようになりました。

この「使い分けることができるようになった」ということが、昔と大きく違います。昔はいわば、買い物の集積所だった百貨店ですが、いまは、選択肢のひとつでしかありません。その存在になると何かの専門性に特化しなければ存在意義がなくなります。消費者が使い分けをするのですから、選択権は消費者にあります。しかし、百貨店は未だに「なんでもそろえたお店」です。しかも特に安くはありません。
もう百貨店のアドバンテージは、基本的に「昔からある格式」的なイメージでしかありません。同じ商品を送るにも百貨店から送ると値打ちが違うという感覚。しかし、そういう感覚は、どんどん廃れて、世代が下がるにつれてどんどん不要なものになっています。
なぜなら、百貨店はもうお買い物の王様ではないからです。昔は、百貨店はお買い物の王様でした。高級ブランド、老舗、話題の商品など、百貨店に行くと集まっていました。そういう利便性と店内の高級感(元々はお金持ち相手だったから)で、庶民にはあこがれのお買い物でした。王様での買い物は権威があり、ありがたく、贈り物には価値がありました。

しかし、今はお買いものの王様はネットショップだったり、アマゾンだったりします。お取り寄せや、こだわりブランドなどの専門店も多彩にあり、それらを探し当てる手段もあります。要は、昔は価値ある「お買い物の情報集積所」としての機能と価値が百貨店にはあったのですが、いまはありません。むしろトレンドものなどは、百貨店の方が遅れていたりします。その点でまず百貨店の利便性な価値がありません。現物を見られるという点はありますが、多くの情報や、発達したコメント機能などで、ネットでも現物の様子がかなり分かります。ひょっとしたら若い世代には、百貨店からのお中元より、アマゾンからのお中元の方が今的で値打ちがあるかもしれません。

などなど、他にも物理的な変化があるでしょうが、それよりも百貨店のマインドこそが時代について行っていないのではないかと思います。どこまで行っても相変わらず殿様商売的な匂いが残っています。百貨店のネットで購入しても、普通のネット販売では当たり前になっているような配慮がされていなかったり。お客さんに面倒を強いても当然といったような状態があります。お客さんの利便性への配慮が驚くほど遅れてるというより、マインドとしてないのではないかと思うほどです。「お客さま第一」と言葉では言っていても実態はそうではありません。そのあたりの不一致さも時代遅れな感じがします。

おそらく一事が万事、あちこちにそういうマインドが現象としてもあらわれているのではないかと思います。今はまだ、そういうことに無頓着な利用者層がいますが、世の中の顧客志向になれた、というかそれが当たり前になっている時代に育ってきた世代には敬遠されていくでしょう。
アマゾンなどの洗練された顧客志向になれた消費者には、極端に言えば百貨店はもう、ある種の別世界のお店という存在ではないかと思います。よほどのことがない限り百貨店では買わないという風になっていくのではないでしょうか。実際、若人が百貨店に行くのは、欲しいブランドが入っているからだったりします。百貨店だからという理由ではありません。それは、そのブランドが路面にあればそこにいきます。

もちろん、百貨店の従業員も世代が若くなるので、世代感覚としては同じでしょうが、百貨店の経営者がその世代になるのは時間がかかるでしょうし、染みついた体質というのはなかなか変わりません。そうこうしているうちに、百貨店マーケットの方が、どんどんしぼんでいくのではないでしょうか。
梅田の阪急百貨店に「メンズ館」というものがありますが、予想に反して好調なようです。庶民の男性も装いに気を遣うようになったというマーケットにメンズのファッション関係だけに特化した「百貨店」です。こういった特価の仕方が百貨店業態のひとつの方向ではあると思いますが、それはもう百貨店ではありません。カテゴリー専門館でもいいましょうか。専門店を集積することによりそのカテゴリーの集客力を持つということです。しかし、店舗業態であるという面で安泰ではないような気がします。
いわゆる従来の「百貨店」という業態では、今後は成り立っていかないのだと思います。新しい業態に変化できるかが「百貨店」企業の生きる道なのではないかと思ったりします。
(グラフはsearch.comのもの)

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